2010年11月18日(Thu) 狭い診療室での暮らしでいただくものは?

 今日、来春1年生になる子供たちの健診を行うために私が校医を務めるけやき台小学校へ行ってきた。診療室では小さい子供にも削ったり詰めたりという治療をしなければいけないので、私も子供も大変だが、健診は診るだけで良いのでずいぶん楽だ。余裕を持って子供達に接したり、観察したりする事ができる。私の前に次々と子供がやってきて、気おつけをして精一杯大きな口を開けて見せてくれる。自然と笑顔になっている自分に気が付く。何だか元気をもらいに来た感じだ。来春けやき台小学校の1年生になる子供達は待ち時間に騒ぐ子も無くマナーも良い子ばかりで感心した。三田の自然環境の良さが子供たちの精神状態にも良い影響を与えているのかも知れない。もちろん家庭でのお父さん、お母さんの頑張りもあるだろう。

 健診が終わって校長先生とお話をする機会に恵まれた。心の悩みや病気をを持つ学校の先生が増えているとの事で、校長先生は“私は(校長として)あちこちに出張したりして広く行動していますが、歯科医師という仕事はとても限られた世界で毎日を過ごしているように思う。心の病になったりする人がいるのではないですか?趣味を持つことも大切でしょうね。”とアドバイスを下さった。

 確かに、私は毎日毎日、朝から晩まで診療室に閉じこもっている。しかしそれが限られた世界での生活だと感じた事がないし、自分が鬱病になるという気がしない。その理由を考えてみた。

 私が診療室で待っていると、子供から高齢者の方まで本当にいろいろな人が私に会いに来てくれる。しかも歯の悩みを持って来る人ばかりで、その悩みに対して問題解決をしたり治療をしたりしなければならない。つまり、毎日毎日本当にいろいろな人とかなり深い所まで心を開いて接し、しかも体に手をくだす(歯の治療をする)ということをしている訳だ。

 私は物理的にはとても狭い世界で暮らしているけれども、精神的にはとても広い世界を飛び回っいるのではないか。歯は物理的にはとても小さなものだけれども、扱っている対象の価値はとても大きいのではないか。

 年に何回か、国内外で、私が特許を有する歯科医療器具の販売関係で、アドバイザリーデンティストとして販売ブースに立つ事がある。行動範囲としてはワールドワイドではあるが、精神的成長という視点からは、あの狭い診療室での閉じこもり生活の方がずっと意義があるように感じる。

 歯科医師という職業を与えてくれた、今は亡き父親に感謝してやまない今日この頃です。

英保裕和

狭い診療室での暮らしでいただくものは?